1992年Jas Obrechtによるインタビュー

1992年Jas Obrechtによるインタビュー
Guitar Magazine 1992年10月号より引用

Q:あなたがブルースを弾き続けるのはどうしてですか?

Johnny(以下J):ブルースは俺を最高の気分にしてくれるからさ。もちろん他のタイプの音楽も好きだけど、でもブルースは、俺の体の中の何かを感じさせるんだ。まったく疲れたり飽きたりしたことがない。今だに学ぶものがあるし、前よりもうまく弾けるようになってるよ。今、特に好きなのはカントリーだ。若い頃ロックのことばかり考えていたときみたいな感じでね。今のロックは50年代頃のロックとかけ離れたものになってきていると思う。ナッシュビル・ネットワーク(ラジオ局)なんかを聴いているとスティール・ギターとかが入った当時の曲がかかるけど、ほとんどがストレートなロックとR&Bだよ。

Q:あなたは50年代の曲をたくさんプレイしていますね。

J:ああ。それはたぶん俺はあまり曲を書く方じゃないし、俺自身の曲がもう充分にあるからだろう。いい曲を書ける新人は常に探してる。俺が曲を書かなくてもすむようにね。まあ、俺は50年代の音楽を聴いて育ったから、今だに強く感じるものがあるんだろうな。50年代中頃から終わりにかけての音楽ってすごく音が良いんだ。すべてがパーフェクトに絡み合っててね。とてもハードなんだよ。当時のロックとブルースはグレイトなサウンドを持ってたんだよ。

Q:あなたはアレンジのアイディアを限りなく持っているようですね?

J:ただいろんなレコードを聴いているだけさ。ブルースのレコードは文字通り見つけられる限りすべて聴くからね。どこからアレンジのアイディアが湧いてくるのかは自分でもよくわからないけど、いろいろ聴いていくうちに俺流の曲に仕上がるんだよ。もちろんやろうと思えば、これは誰が弾いたもので、これは誰が弾いてたものだって言うことはできるけどね。

Q:あなたにとってのブルース・ヒーローと言ったら誰ですか?

J:当然ロバート・ジョンソンさ。ミシシッピのクラブや安酒場なんかで会ってみたかったね。それと、もちろんサン・ハウス。Tボーン・ウォーカーはいつでも俺が好きなギタリストの一人なんだ。エレキ・ギターのブルース・スタイルは誰かが考え出したものだと言うなら、それはTボーンさ。たぶん、他のどのギター・プレーヤーよりも彼の音楽を聴くことによって学んだことが多いと思う。チュ でアコースーニングのやり方が優れているんだ。そういった初期のジャズに関することってとにかく凄いんだよ。ホーン・セクションと一緒に驚くべき演奏をするんだ。ストレートなブルースというより、ブルース・フィーリングを持ったジャズのビッグ・バンドって感じだな。ライトニン・ホプキンスもすごくカッコいいって思ってたよ。ビッグなショーをやったあとに、街角やバスの中や小さい酒場なんかでもプレイできたんだから。そういうことは全然気にしなかったみたいだね。アコースティックを弾いたり、エレキを弾いたり、あるいは一人で弾いたり、バンドで弾いたりといろんなことをしてた。ライトニンは本当のブルースマンだったね。

Q:最近の人で印象的なのは?

J:アルバート・コリンズのプレイはいつも好きだったね。彼独自のものがある。たぶんチューニングが違うんだろうけど、どういうチューニングかはわからないんだ。

Q:オープンFmですよ。

J:すごい!変わってるな。全然他の人と同じに聴こえないからね。彼のプレイはとても気に入ってるんだ。スライドで最近気に入ってるギタリストはロイ・ロジャースだね。彼にはまいるよ。オーティス・ラッシュも今だに凄いと思う、ノッテる晩のショーを見ればだけどね。彼はいいときと悪いときとで少しムラがあるんだけど優れたプレイヤーだよ。

Q:ブルース・ギターの殿堂入りの曲を選ぶとしたら、何を選びますか?

J:たくさんあるよ!メンフィス・スリムのマット・マーフィは俺がいつも感動してるギタリストなんだけど、「This Time I’m Through」のリードはとてもいい。忘れたことがないくらいだ。最初に聴いた時は、彼は世界で一番速く弾けるギタリストに違いないと思ったね。今聴いてみると初めて聴いたときほどは速く聴こえないけど。あとオーティス・ラッシュの曲も何曲かは信じられないようなものがあるんだ。コブラ時代の曲は全部凄いよ。「Checking On My Baby」とか「Three Times A Fool」なんかはね。

Q:CDを聴いて育っていく今のキッズは何か失っていくものがあると思いますか?

J:そうだね。俺なんかは未だにCDプレーヤーを持ってないよ。CDは耐久性を生み出したに過ぎないんだから、結局はそこまでなんじゃない?俺は何に対しても でアコース古い人間なんだよ。トランジスタ・アンプだって温かいサウンドが出せるのはわかってるけど、チューブ・アンプが好きだしね。ただ今はCDとかトランジスタ・アンプの必要以上の頑丈さ、耐久性みたいなものが気に入らないだけなんだよ。

Q:ベーシックなトラックをレコーディングするときに、ソロもいっしょに弾くことは?

J:そうだな、もしふたつ分ギター・トラックがあるとすれば、普通は最初、ひとつのトラックにほとんどのリードを入れてしまう。もし、もうちょっとリズムとか他のものが必要だったら、あとで入れるね。ソロは実際に弾くまで自分でも何が出てくるかわからないんだ。どのくらいソロをとるのか自分でもわからないことがよくあるよ。「ライフ・イズ・ハード」ではボーカルを除いて、ほとんどオーバーダブをやらなかった。4人で一緒に録ったんだよ。マック・レベナック(ドクター・ジョン)は初期のデューク・レコードの曲みたいだって言ってたよ。俺はボビー・ブランドからギターに関して学んだんだ。彼は優れたギタリストたちと一緒にやってたから。俺のお気に入りは「Further On Up The Road」、「I Smell Trouble」それから「I Don’t Want No Woman」だね。誰が弾いているのかははっきりわからないけど、すごくいいレコードさ。本当にたくさん学ぶことがあったよ。(注:これらの曲は1957年に録音されたもの。ギターはクラレンス・ホリモン)

Q:ドブロをちゃんとした音で録音するいい方法はありますか?

J:ドブロをいい音で録るのは難しいんだ。「レット・ミー・イン」ではバス・ルームで録音したよ。頭の上にマイクをセットしてね。

Q:ボーカルも同時に録音したんですか?

J:いや、ボーカルとギターは絶対一緒には録らないんだ。

Q:「レット・ミー・イン」のドブロはサン・ハウスのような音ですね。

J:そうだね。サン・ハウスからはスライドの基礎を多く学んだよ。米コロンビアから出ているサン・ハウスとロバート・ジョンソンの2枚のアルバムがとても役立った。サン・ハウスのプレイは弾き込んだって感じじゃなくて、素朴なプレイなんだ。だからチューニングがどうなってるかとかは、わりとわかりやすかったよ。サン・ハウスのプレイを覚えたあとは、ロバート・ジョンソンも簡単にわかったけどね。俺はその2枚のアルバムとマディー・ウォーターズのアルバムからスライドを学んだんだ。

Q:「イフ・ユー・ガット・ア・グッド・ウーマン」のスライドはマディーっぽいですね。

J:ああ、でもレコーディングが終わったあとで、ディック・シャーマン(共同プロデューサー)が”マディーというよりはエルモア(ジェイムス)みたいだな”って言ってたんだ。俺は”なぜかわからないけど、まだマディーっぽくないかい?”って言ったよ。でもなぜ彼がそう感じたかはなんとなくわかるんだ。俺はチューニングをオープンAよりオープンEでやるほうが多いけど、初期の頃マディーはオープンAでやってたからね。でも晩年はマディーだってチューニングはオープンEで、必要なときだけカポを使ってプレイしてたんだよ。

Q:あなたとマディーの昔のブルースマンに対する考え方は同じようなものでしたか?

J:マディーは昔の人の話はあまりしなかったんだ。俺は特にロバート・ジョンソンのことをよく尋ねたっけ。彼はミシシッピでのロバート・ジョンソンの噂を聴いて、彼が演奏していたクラブまで観に行ったらしいよ。しばらく聴いて帰ったらしいけど、ロバートは本当にサウンドがよくて驚いたって言ってた。マディーは自分ギターに関しては本当に謙遜してたね。自分ではあまりいいとは思ってなかったらしい。でも彼がこう言ったのを覚えてるよ。”昔の人は俺よりうまかったかもしれないけど、俺は今に合ったものを弾くことができる”ってね。彼はテクニックとかそういうものじゃなく、彼はすべてをひっくるめたやり方をわかってたんだね。

Q:ジョニー・ウィンターのベスト・プレイが聴けるのはどの曲ですか?

J:「ブート・ヒル」(「ギター・スリンガー」に収録)はいつでも気に入ってるよ。スローなブルースだったら「サード・ディグリー」かな、きれいな曲だね、「ビー・ケアフル・ウィズ・ア・フール」(「ジョニー・ウィンター」に収録)は面白い曲だし、1曲だけを選ぶなんてできないよ。アルバムを1枚選ぶほうがまだ簡単だな。「ジョニー・ウィンター」と「The Progressive Blues Experiment」が好きだね。ロックっぽいアルバムなら「Still Alive And Well」がいいね。新しいかどうかわからないけど「レット・ミー・イン」は俺が作ったどのアルバムにも負けないくらい聴いてて楽しいよ。

Q:特別な時しかプレイしないというような曲はありますか?

J:普通はよりパワフルな曲が好きだ。でもあまりにもエモーショナルな時なんかは、必ずしもそうだというわけじゃない。マディーの葬儀に行った時なんか、どうしてポップス・ステイプルズは歌うことができるのか俺には理解できなかったよ。俺は愛する人の葬儀で演奏なんかできないからね。俺が知ってる最もエモーショナルな曲は、スキップ・ジェイムスの「Devil Got My Woman」を彷彿させるあの本当に奇妙なロバート・ジョンソンの曲だな。

Q:「ヘル・ハウンド・オン・マイ・トレイル」のことですか?

J:そう。2曲とも俺が本当にいかれちゃいそうなチューニングなんだ。誰もスキップ・ジェイムスみたいには弾けないだろう。最もエモーショナルに弾けるギタリストだね。そう思わない?彼は他の人に自分がどうプレイしてるのか教えたがらなかったって聞いたよ。”誰かのレコードでプレイする時には誰にも自分のやっていることをわからせたくないだろう。だったら自分のプレイはするな!”ってアール・フッカーが言ってた事があるよ。よくある話だけどさ。俺に言わせりゃクレイジーだ!レコードを作るってことは自分のプレイをみんなが聴くってことなのに。でもそういうパラノイアな人もいるんだよ。

Q:行き詰まったギタリストに何かアドバイスするとしたら?

J:誰にでもあることさ。スポーツ選手にだってあるだろう?俺にだって”このフレーズは前に弾いていたのと同じじゃないか!”って思う時が来るかもしれないよ。でもなぜかわからないけど、斬新なフレーズばかり弾ける時期もくるものさ。昔のレコードを聴いたり、新しく出てきたヤツのプレイを聴いたりしたら、突然目の前の扉がパーッと開いて以前よりうまく弾けるようになるってこともあるかもしれない。いろいろ抜け出す方法はあるし、決して遅すぎるってことはないよ。気分的に疲れたら1週間ぐらいギターを置いてレコードなんかを聴いてみたら?大事なことはたくさんの音楽を聴き、それを自分のしたいように組み立ててみることさ。プレイし続けてうまく切り抜けることだね。