1977年 Dan Mennによるインタビュー

1977年 Dan Mennによるインタビュー
Guitar Player 1977年6月号(Vol. 11, No.6)より引用

俺がね、いろんなことを学んだり、それを自分のプレイに採り入れさせてもらったアーティストとなると、そりゃいっぱいいるさ。・・・・・もっとも、その連中の名前を全部覚えてるわけじゃない、悪いけど・・・ 忘れてしまった連中としたら、気分が悪いだろうけど、まぁ、それも運命ってもんさ。 で、そん中から何人かだけピックアップして挙げるわけなんだけど、ま、しかたないことだね。全部挙げるなんて不可能だよ。 俺が最初にやったのは、全てのブルースからロックンロール、それにヒルビリー・スタイルのもんまで、耳にできる限りの連中のプレイを聴くことだったんだ。 みんなが凄いと言っているような連中は、やっぱり俺が聴いても実際よかったよ。

Chuck Berry

ホントにいろんなレコードを聴いたけど、俺が最高に飛ばされたレコードっていうと、チャック・ベリーの「After School Sessions」アルバムだね。 なんでかって言うと、あれこそブルースのフィーリングを持った正真正銘の、そして最初のロックンロール・ギターだったからさ。 みんなは、あれを聴いても、ただノスタルジアを感じること以外にゃ、あんまり感動しないって言うけど、 あのレコードが出たころは、誰もやれなかったことだったし、実際誰も聴いたこともないサウンドだったのさ。 そんなわけで、俺にとっちゃ”スクール・デイズ”こそが、ゴキゲンなギターの聴ける最初のロックンロール・ソングなんだ。 もちろんこの曲は「After School Sessions」アルバムにはいってるさ。 “スクール・デイズ”だろ?それに”ロール・オーバー・ベートーベン”やら”ジョニー・B・グッド”それから最初のヒット曲”メイベリーン”なんか、 全部このアルバムが「Chuck Berry Is On Top」アルバムにはいってるんだよ。

Jimi Hendrix

J:俺が好きなギタリストと言や、もうジミ・ヘンドリックスに止めをさすね。 あれほどオリジナリティーとパワーのあるプレイをやったのは、あれ以前にしろ、以後にしろ、奴の他にゃいるわけないしね。 奴は、チャック・ベリー以来の最もユニークなサウンドとプレイのスタイルをもったプレイヤーだったしね。 ま、チャック・ベリーが50年代の最も偉大なミュージシャンだとしたら、ジミ・ヘンドリックスは正に60年代のそれにあたるんだ。 奴は、完璧なユニークさと、オリジナリティを持って登場したんだよ。チャック・ベリーがそうだったようにね。 ま、奴はそんな感じでプレイしてたけど、ま、史上最高のベスト・ギタリストだね。 ジミ・ヘンドリックスのファースト・アルバム「Are You Experienced」を聴いた時なんか、チャック・ベリーのレコードを聴いた時とおんなじぐらい飛ばされたもんだよ。 俺にゃ、奴のどの曲がいいかなんて言えやしない。だって、奴のアルバムは、もう全て最高だからねぇ。

Robert Johnson

カントリー・ブルースのベスト・スライド・ギタリストといえば、ロバート・ジョンソンだろうね。 俺は、他の連中よりいっぱいスライドを練習した。いろんなやり方でね。 というのが、よくいるロック・ギタリストたちに比べて、俺の場合オープン・チューニングでやることが多いんでね。 ・・・俺がよく使うのは、スライド・ギタリストのほとんどがやってるように、オープンのAとEなんだ。 レギュラーのチューニングだとコードはやれないし、リードだけやるはめになるしね・・・。 ・・・で、ロバートは、オープンのAでいろんなことをやってくれた。彼のやった方法ってのは、他の誰のよりもゴキゲンだったのさ。 彼は、スライドをマスターするために、デビルに魂を売り渡したんじゃないかと思えるくらいなんだ。 このことは彼自身しか知らないだろうけど、とにかく誰も彼についてはあんまり知らないからね。 多分彼はブルースの2大スライド・プレイヤーであるサン・ハウスとチャーリー・パットンからいろんなことを学んだろうけどね・・・。 とにかく彼は、恐ろしい位に凄いギタリストだったよ。 ・・・こんな話があるんだ。最初彼はぜんぜんスライドがやれなかったんだけど、ある日、急にどっかにいなくなったと思ったら、 1~2ヶ月たって戻ってきたときには、すっごいスライド・テクニックをマスターしてたと言うんだね。 ぜんぜん弾けなかったのにだよ・・・。 ・・・それが、一気にベストをはるかに上回る存在になってしまったって言うんだ。 そのうえ、彼は”Hellhound On My Trail”とか”Me And The Devil”といった曲ん中で「デビルに魅いられた」といった内容のことを歌ってるんだ。 彼が、この魔風にさらされたのは、21か22才のころだっていうけど、何か意味がありそうな気がしないかい? みんなが、この馬鹿げた話を信じるか信じないかは別としても、とにかく、そんな風にして彼が戻ってきたのはホントの話なんだ。面白い事実だよ。 彼は、いつだってひどく悩んでたようだ。 ・・・彼がどんな風にスライドをマスターしたのかは知らないけど、とにかくあのスタイルではベスト・スライド・ギタリストだったよ。 「On King Of The Delta Blues」アルバムには、15~6のカットが収められているし、このアルバムで、彼の全てが聴けるよ。

Eric Clapton

エリック・クラプトンもグレイトだね。クリームにいたころのクラプトンは好きじゃなかったけどね。 しかし、ジンジャー・ベイカーとジャック・ブルース、そしてクラプトンが一緒になって作り出すクリーム・サウンドには飛ばされたね。 クリームは科学的な性質を持ったグループだったと思うんだ。 連中の作り出すサウンドは、最高だったし、だから俺は連中のステージを見た後は、いつも4~5日間、その音が頭ン中から離れないくらいだった。 ホントに凄かったよ。あれは、俺が見た最初のホントのロックンロール・ショーだったね。 ・・・でもね。エリックは彼を後ろでバック・アップし、サポートしてくれるような連中とやった方がいいと思うんだ。 クリームの場合、みんなソロって感じだったしね。じゃないと彼の良さは出ないと思うし・・・。 彼は偉大だけど、彼としてはスターになりたいわけでもなければ、1人だけ目立とうとしてるわけでもないと思う。 彼は、ホントはほかのメンバーと一緒になって1つの音を作りたいんだと思うよ。

Jeff Beck

フィードバックをビンビンにやってたころのジェフ・ベックも好きだね。彼のフィードバック・プレイは、俺が見たどのプレイヤーよりも最高だったしね。 もちろんジミは別で彼のプレイには心底まいってしまったけど、ジミが出てくる前にジェフはフィードバックでやってたんだ。 彼は本当に信じられないくらいのミュージシャンだね。俺は今だってジェフのプレイは好きだけど、どっちかって言うとやっぱりヤードバーズのころが、最高だったと思うよ。 特に「Over, Under, Sideways, Down」アルバムなんて最高だね。

Chet Atkins

チェット・アトキンスも大好きだよ。チェット・アトキンスとマール・トラヴィス。2人ともホントに素晴らしいね。 俺に言わせりゃ、2人とも、そのへんにゴロゴロしている人気ロック・ギタリストなんかより、はるかに素晴らしいギタリストだと思うよ。 アトキンスなんてそりゃすごいことやるしね。・・・クラシックみたいのからフラメンコ、それにカントリーまで、何でもござれって感じね。 彼は極端にすぐれた多様性を持ったミュージシャンなんだよ。

Luther Naley

ルーサー・ネイリーってグッド・ガイも挙げなくっちゃね。俺は彼からいくつか学んだんだ。 彼はロイ・ロジャースのバンドでベースを弾いてたんだけどね。でも素晴らしいギタリストなんだよ。 もし、最高のカントリー・ギタリストになりたけりゃ、そして、ホントにクールなミュージシャンになりたけりゃ “Yankee Doodle”や”Dixie”の2つの曲を同時にプレイできなきゃなんないんで、ルーサーは、それをやってのけたんだよ。 高音弦で、どっちかの曲をやって、低音弦でどっちかの曲をといった風に同時に2曲ね。 彼はどんな風にやるのか知らないけど、とにかくそれをやっちゃうんだ。その他にいろんなことをやるんだけど、ま、俺にゃ到底できっこないよ。

Seymore Drugan

それからセイモア・ドルーガンって奴からも随分学んだよ。奴は、何年か前まで大きなラジオ・ネットワークで働いていたんだけどね。 リッケンバッカーを弾いてたよ。ジャズ畑の男でね。基本的な音楽理論をよく知ってたよ。 俺は、理論の勉強なんて全然やんなかった。ただギターを好きで弾いてただけでね。 だから読譜なんて全然ダメだったんだけど、奴のおかげでいろんなことが解ったよ。奴はゴキゲンさ。俺はバカにゃなりたくなかったからね。 俺は、その気になれば、一晩中でも好きなミュージシャンの名前は挙げられるけどほかのスタイルのものにはあまり興味はないんでね。 セゴビアは別としてね。・・・とにかくジャズのことはよくわからん。

B.B. King & T-Bone Waker

B.B.キングはもちろんさ。彼のアルバムはみんな最高だよ。 ・・・Tボーン・ウォーカーはそれほど有名じゃないけど、B.B.はTボーンからいろんなことを学んでるんだ。 Tボーンは素晴らしいプレイのレコードを何枚か出してるけど、そん中でB.B.みたいなプレイがいっぱい聴けるよ。 B.B.は、いつも人のことを気遣いながらやってきた。だから俺は彼が好きなんだ。 俺は彼をホントに好きだよ。全然うぬぼれてないし、かわった男でもない。彼はいつも人の役に立とうとしている。 それは、彼もまた人々に助けられたからさ。

俺が推薦するレコードは、ジャズよりはブルースだね。 スライド・ギターをやるにせよ、ロックをやるにせよ、ブルースをやるにせよ、ロバート・ジョンソン、B.B.キング、ジミ・ヘンドリックスは、 どうしても欠かす事はできないし、できる限りいろんな連中のレコードは全部買ってしまいたいくらいさ。 だから俺には、「これこそ必聴の名盤」なんて言って1枚だけ挙げることはできない。 俺には、金がある限り、いろんなレコードを買えとしか言えないよ。あるいは、金のある限り、いろんなコンサートへ行け・・・という風にね。

1曲だけ、とか、1人だけ挙げろっていうのが到底無理な話しでね。いい曲はいっぱいあるし。 いいアーティストはあんまいっぱいいすぎるんだ。 だから”さあこいつのこのレコード聴いて、コピーしろ。そしたらゴキゲンなギタリストになれるよ”なんてとても言えない。 一番なのは、いろんなレコードをとにかく聴いて、そしてその中から自分が一番気に入った音楽やアーティストを選びだすことさ。 でも、偏見を持ったり、考え方が狭かったりしたらダメさ。できる限りいっぱいのプレイを聴くこと・・・。 よく、自分の好きなアーティストにのめり込んで、もう、すっかりそいつと同じプレイをしているような奴がいるだろ? ジミ・ヘンドリックス・フリークだったら、そっくりそのままジミのようなサウンドでやってるようだしね。 ・・・アイドルを持つことはいいことなんだけど、ほかの連中のプレイも聴かなきゃどうしようもない。 1人に夢中になるのは、そいつにとってとっても良くないと思うのさ。 いくらうまくコピーしたって、本人を負かすことなんてできっこないんだからね。